食道がんの治療は、近年かなり複雑になってきています。当院は、内視鏡切除、手術、薬物療法、放射線療法のいずれも豊富な治療実績を有する専門施設です。内科、外科、放射線科の医師がチームで診断・治療を行い、ひとりひとりに最適な治療方針を提案いたします。食道癌と診断された場合は消化器センターを受診してください。手術は胸腔鏡・腹腔鏡を用いて体のダメージをできる限り少なくし、早期の回復を目指しています。また、さらに早期の食道癌に対しては内視鏡的治療(ESD)を行います。食道癌は咽頭がんや喉頭がんが同時に見つかるケースも多いです。当院では頭頚部から食道まで隅々まで内視鏡医が精密検査を行い、数mm程度のがんも見逃さずにESDを行っています。

2022年度実績

手術症例数の推移
手術症例数の推移

■食道切除27件 (うち胸腔鏡手術27件)
■食道内視鏡治療 ESD 28件
■化学放射線療法 41件(うち陽子線療法22件・再発部位を含む

内視鏡治療(ESD)

当院では、早期の食道癌に対して内視鏡的治療(ESD)を積極的に行っています。胃カメラを使ってがんを切り取る治療です。がんの大きさや深さによっては、内視鏡治療が困難なケースもありますが、全国でも有数の治療実績がありますので、内視鏡治療を希望される患者さんはいつでも検査を行います。

また、食道がんの患者さんは咽頭がんや喉頭がんが同時に見つかるケースも多いです。頭頚部から食道まで、隅々を内視鏡専門医が精密検査を行います。数mmのがんも見逃さずに早い段階で内視鏡治療を行い、がんを治していきます。

食道がんの手術

食道がんは、あらゆるがんの中でも、とくに手術が難しい病気として有名です。食道は首から胸の中を通って、おなかに達する細長い臓器で、体の奥深くに位置するため、胃がんや結腸がんの手術と比べると3倍くらい大変です。

しかし、以前は胸を大きく切った傷あとが後々まで痛むことがありましたが、最近では胸腔鏡手術やロボット手術が普及し、かなり小さな傷で手術をすることが出来るようになってきました。当院では、ほとんどの食道がん患者さんが胸腔鏡で手術を受けています。

手術の概要

食道がんは首のほうにも、おなかのほうにも、リンパ節を伝って広い範囲に進行していくため、通常は食道亜全摘術が必要になります。食道を切った後は、胃袋を細長く切っていき、食べ物の通り道を再建します。大掛かりな手術ではありますが、当院では5~6名の消化器外科医がチームで手術に参加し、できる限り短時間に、合併症をすくなく、安全に実施するよう心がけています。

術前化学療法について

がんが筋層まで浸潤している場合や、リンパ節転移が疑われる場合、手術だけでなく、術前後に抗がん剤治療を行うことが標準的な治療になっています(術前化学療法といいます)。一般的には、ドセタキセル(D)、シスプラチン(C)、5-FU(F)の3種類の抗がん剤を同時に投与するDCF療法を行います。1コース4週間かかります。投与自体は5日間なので、入院は前後の期間を合わせて10日前後は必要です(副作用が強く出る場合はその限りではありません)。

このDCF療法を2~3コース行ってから手術を行いますので、通常、治療開始から手術まで2~3か月くらいを要することになります。治療中は病状をこまめにチェックし、場合によっては2コースで術前化学療法を切り上げて手術を先に行ったり、放射線療法を追加したりするケースもあります。

手術か放射線治療か迷われたら

放射線治療設備はとても充実しており、全国から患者さんを紹介していただいています。とくに先進医療として行っている陽子線治療は、国内外から患者様が来院いただいており、これまで500件を超える食道がん治療を行ってきました。

手術を希望されない(または手術に耐えられない状態の)患者様の受診も多く、その場合は経験豊富な内科医・外科医・放射線科医がそれぞれの治療について丁寧に説明をいたしますので、ご自身の価値観にあった治療を選択していただくことも可能です。