陽子線治療は放射線治療の一種。周囲の正常な細胞への影響を抑えながら、がん病巣にピンポイントで照射できるのが特長です。“切らずに治す”体にやさしい治療であり、“切れないがんをも治す”ことも可能になりつつあります。
さまざまな理由で手術ができない、治療の選択肢が限られている、手術や入院は避けたい・・・。患者さんが抱えている悩みは千差万別です。そんな患者さんの一筋の光となれるよう、私たちは陽子線治療に取り組んでいます。

【陽子線治療について】

当院では、さまざまな悪性腫瘍に対して陽子線治療を実施しています。陽子線治療は水素の原子核である陽子を光速近くまで加速してがん細胞に当てることで、がん細胞を死滅させる新しい放射線治療です。従来の放射線治療は体表面に強く当たり、深いところでは弱くなってゆくのに対して、陽子線は深いところにエネルギーのピーク(ブラッグピークと呼びます)を作ることができます。そのため体の正常の部分の障害を減らしながら体の深いところにある腫瘍に強い放射線を照射することができます。

【陽子線治療センターで行われているがん治療】

頭頸部がん/治療回数 5~37回

・耳下腺がん ・上顎洞がん ・顎下腺がん ・篩骨洞がん
・悪性黒色腫 ・口腔がんの非扁平上皮がん など

肝細胞がん/治療回数 10~38回

・口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く

肝内胆管がん/治療回数 10~38回

局所進行性膵がん/治療回数 20~33回

局所大腸がん/治療回数 18~35回

・手術後に再発したものに限る

前立腺がん/治療回数 12~39回

小児がん/治療回数 6~34回

骨軟部腫瘍/治療回数 16~56回

・脂肪肉腫 ・骨肉腫 など(切除非適用のがん)

【腫瘍の深さでピタリと止まる陽子線】


がん治療に使われる放射線は、大きく「光子線」と「粒子線」の二つに分けられます。従来の放射線治療で使われるX線は光子線、陽子線は粒子線の一種です。
陽子線治療は、水素の原子核である陽子を光速の60%近くまで加速してがんにぶつけることで、がん細胞を死滅させる治療法です。すべての細胞は2重のらせん状になったDNA(遺伝子)によって、細胞分裂がコントロールされています。陽子線はがん細胞のDNAを2本とも切断する破壊力を持っており、その増殖を阻止できるのです。
さらに陽子線は、ある深さにおいてエネルギーのピーク(ブラッグピーク)を作り、止まる寸前にエネルギーを全部放出するという物理的特性を持っています。この特性を利用し、がんの近くにある臓器や周囲の正常細胞への影響を抑えながら、ピンポイントでがんを狙い撃ちできることも陽子線治療の特長です。体にメスを入れることなく、副作用も最小限に抑えられるため、がんの種類によっては外来通院で治療ができます。
陽子線だけで治療が難しい症例は、陽子線にエックス線や化学療法(抗がん剤)を組み合わせ、それぞれの治療法が得意とするところを生かした治療をご提供しています。

がん病巣に集中して照射できるので・・・

  1. 正常組織への影響を減らすことができます。
  2. 腫瘍に対し、強い放射線が照射できます。
  3. 放射線に弱い気管等の近くにあるがん細胞にも照射できます。
  4. がんの種類によっては、仕事や日常生活をつづけながら外来通院での治療が可能です。
  5. 再発したがんにも再照射できる事例があります。

【陽子線治療の治療費について】

南東北がん陽子線センターで陽子線治療を受けていただく場合の、治療にかかる費用とお支払い方法についてのご案内です。
治療費(治療技術費)はがんの種類や患者さんの保険の状況により、大きく3種類に分けられます。
現在健康な方でも、将来のリスクに備えて知ることが大切です
・保険診療について
 公的医療保険の適用部位が増えてきています。適用のがんについては、「陽子線治療が行えるがんの種類」の「公的医療保険」適用部位が該当します。
・先進医療について
 公的医療保険に該当しないがんで、民間の医療保険(先進医療給付金特約制度)に加入している方が利用できます。支払い条件等については、保険会社にご確認ください。
 「自己負担金」:治療部位1カ所につき照射回数にかかわらず288万3千円(非課税)
・自由診療について
自由診療での治療費は、陽子線治療費、診察・検査にかかる費用など全額が自己負担となります。
治療費の目安は、300万円(税別)です。

【診療のご予約】

診療は完全予約制になっております。患者さんご本人(家族)、またはかかりつけ医療機関から直接電話にて、予約をお取りください。

予約の方法に関しては、こちらの「「南東北がん陽子線治療センター」のホームページをご参照ください。
http://www.southerntohoku-proton.com/