嚢胞(のうほう)は、液体が貯留した小さな袋のようなものです。生まれつき、肝臓や腎臓などにできている場合があり、肝嚢胞、腎嚢胞などと呼ばれます。嚢胞が病気を引き起こすことはめったになく、検査で偶然見つかることが多いです。ほとんどの場合、そのまま治療をしないでも問題になることはありません。

膵嚢胞と言われた場合は?

健康診断で超音波検査を受けたり、ほかの病気でCT検査を受けたりした場合に、偶然膵嚢胞と診断されることがあります。過去に膵炎を起こした方や、膵臓の外傷などによって膵臓に嚢胞ができることがあるのです。嚢胞自体は危険ではないのですが、膵臓の場合、単なる嚢胞ではなく、嚢胞性腫瘍が隠れていることがあるので要注意です。

膵臓に液体を作るタイプの腫瘍ができてしまい、その腫瘍が作った液体が嚢胞になることもあり、それを「膵嚢胞性腫瘍」と呼びます。嚢胞性膵腫瘍には、良性のものと悪性のものがあり、診断が難しいケースもあるので要注意です。悪性の場合や、今後悪性になる可能性が高い腫瘍は、手術して取ってしまうほうが良いですし、良性だと思ったら、しばらく様子を見ながら、定期的に検査をしていきます。

嚢胞性腫瘍にもいろいろある

手術をするかが問題となるのは、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と粘液性嚢胞腫瘍(MCN)の2つが有名です。そのほか、漿液性嚢胞腫瘍(SCN)などの腫瘍もありますが、これはほとんどの場合経過観察となります。

MCNは40~50代の女性、膵体尾部にできることが多いです。MCNは基本的に手術を行います。IPMNは膵嚢胞性腫瘍の中では、よく見かける腫瘍で、良性のことも多いが、悪性になることもあり要注意です。IPMNは高齢男性の膵頭部にできることが多く、あちこちに多発することもあります。小さなものはほとんど悪性になりませんので、MCNのように、発見されたらすぐ手術とはならないケースが多いです。

IPMNが見つかったら?

膵嚢胞性腫瘍は、造影CTで発見されることが多いですが、膵管との関係や拡張を見る必要があるので、MRI(MRCP)検査も行います。2㎝以上のIPMNの場合には、超音波内視鏡検査(胃カメラを利用した超音波検査)を行い、細胞を取る検査を行う場合もあります。

専門外来で定期検査を行いましょう

IPMNは、嚢胞性腫瘍そのものが悪性化する場合と、すい臓の別の部位から「がん」が発生してしまうことがあります。また、同時に大腸癌、胃癌などが見つかるケースも多いといわれています。専門性の高い疾患ですので、当院では専門外来を開設し、国際膵臓学会のガイドラインに基づいて、検査や治療を行っています。万一、悪性が疑われた場合には、そのまま膵臓外科の専門医が治療を行います。膵嚢胞と診断されたら、一度消化器センターの外科外来を受診してください。

担当医師:鈴木伸康医師(外来日 水曜日・金曜日)