当院は日本胃癌学会の指定する胃がん治療の認定施設です。
診断、内視鏡治療、外科治療、薬物療法、放射線治療など、胃癌に関するすべての診療を専門的なレベルで提供しております。
経験豊富な内視鏡医、外科医、腫瘍内科医、病理診断医が総力を挙げて治療にあたります。
全国的にも有数の診療実績をもつ病院ですので、検診などで胃に異常を発見された方は、当院の外来を受診し、ご相談にいらしてください。

2021年度実績

■内視鏡的切除(ESD)226件
■手術件数112件(うち腹腔鏡手術・ロボット手術81件)
■幽門側胃切除術77件
■噴門側胃切除術11件
■胃全摘術21件
■幽門保存胃切除術・他 3件

精密検査・診断について

胃がんを発見された場合、病気の進行具合によって治療方針が大きく変わってきます。そのために、早めに精密検査を受診されることをお勧めします。

胃がんの精密検査とは、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)、造影CT検査、バリウム(消化管造影検査)の3つがメインになります。造影CT検査は、がんの広がりや、転移の有無を調べるために行われます。
バリウム検査は胃の全体的な膨らみ具合を見ることで、がんの深さを診断するのに役立ちます。精密検査用の胃カメラは、拡大内視鏡や超音波内視鏡など太いスコープを用いることがあるので、鎮静剤を使って眠りながら検査を受ける方法もあります。

胃カメラでは、病変の組織を一部採取し、顕微鏡の検査(病理組織検査)に提出し、がんの細胞が見えるかどうかを確かめます。また、治療に耐えられるかどうかを判断するために、採血検査、呼吸機能検査、心電図検査なども一緒に行うことが多いです。糖尿病やぜんそくなど、もともとの持病がある方は、その状態も検査しておく必要があります。そのほか、別の臓器にも病気が疑われる所見があれば、大腸内視鏡検査、MRI検査、PET検査などを追加で行います。

早期胃がんには『ESD』を行います

早期胃がんには、胃カメラで病気を切り取る「ESD」を行っています。当院は全国で10本の指に入る治療実績を有する専門施設です。 ESDは胃カメラで病巣を切り取るため、手術後の後遺症がほとんどありません。ほとんどの場合、入院は1週間以内で治療できます。ご高齢の患者様や、持病をお持ちの患者様でも安全に治療をすることができるという大きなメリットがあります。

ただし、ESDで切り取った病変の組織を顕微鏡の検査に提出し(病理検査といいます)、がん細胞の性質や深さなどを総合的に判断し、転移や再発のリスクが高いと判断された場合には胃切除手術が必要になる場合もあります。これは胃癌治療ガイドラインによって細かく手術を行うべき基準が設定されていますので、私たちはこの基準に沿って過不足のない治療を提案いたします。

当院のESDを担当する濱田晃市医師は、全国的にも有数の経験を持つスペシャリストです。(下写真)

手術までの流れ

あまり症状が無い方は、全ての検査は外来で行います。手術の2日前に入院していただきます。がんの進行状況によっては、食事が十分に食べられないこともありますので、その場合は早めに入院して、栄養状態を改善させながら検査も進めていきます。胃がん手術後の平均在院日数は10.5日です(2017年から2021年の当院の患者様)。クリニカルパス(下図)に沿って治療が進みますので、担当医に関わらず治療期間はすべて同じです。

術後の生活を重視

早期がんとは、胃の断面図を考えたときに、外側の筋肉の層にがんが浸潤していない段階のものをさします。この段階であれば、胃を全摘するようなケースは少なく、切除範囲が大きくなりすぎないように注意する必要があります。当院では、胃の機能が低下しないような機能温存術式を積極的に行うようにしています。

胃の容積を温存する手術

幽門保存胃切除術は胃の出口を残し、胃の容積を温存する手術です。胃腸の動きをコントロールする迷走神経を丁寧に残すことが重要です。術後1-2年は食べ物が停滞する症状が出やすいですが、もっと長期的にみると食事摂取状況がかなり良くなります。

胃全摘を回避したい患者さんにとって大きなメリット

噴門側胃切除術は、術後は横になると食べ物が逆流してしまうため、あまり行われなくなった術式でしたが、近年では逆流を防止する噴門形成法が発達し、術後の後遺症はかなり改善しています。腹腔鏡手術やロボット手術で行うと、より精密な縫合が可能で胃全摘を回避したい患者さんにとって大きなメリットがあります。

胃GISTの手術実績も豊富

LECS(腹腔鏡・内視鏡合同手術)は、おもに胃GISTに対する手術法として開発されました。当院でも早くからこの手術を取り入れ、すでに60件以上の手術実績があります(2022年時点)。胃癌に対しても、胃カメラでの治療が困難なケースに、この方法を適応することができます。

当院では過去に胃切除術を受けた患者さんに、再度発生した早期胃がんに対して、LECSを行ったこともあります。きちんと適応例を選ぶことで後遺症の無い手術が可能です。これは胃癌治療ガイドラインによって細かく手術を行うべき基準が設定されていますので、私たちはこの基準に沿って過不足のない治療を提案いたします。